足場積載荷重の計算方法:鳶一級技能士が解説

足場の積載荷重計算方法について、専門家の視点から具体的に解説します。足場の積載荷重は、足場の安全性を確保するために非常に重要な要素です。計算方法は、足場の種類や使用される材料に応じて異なりますが、ここでは一般的なガイドラインと特定の計算例を紹介します。
足場の積載荷重とは
足場の積載荷重とは、足場が安全に支えることができる最大の重量を指します。これには、作業員、工具、材料など、足場上に置かれる全ての重量が含まれます。適切な積載荷重の計算は、足場の構造的な安全性を保証するために不可欠です。
積載荷重計算の基本
積載荷重の計算は、主に足場の「布板」の荷重耐性に基づいて行われます。布板のサイズと組み合わせが、許容される積載荷重を決定する主な要因です。例えば、幅が広い布板は、より重い荷重に耐えることができます。
- 500mm幅の布板は約250kgの荷重に耐えることができます。
- 400mm幅の布板は約200kgの荷重に耐えることができます。
- 250mm幅の布板は約120kgの荷重に耐えることができます。
建枠のサイズに応じて、これらの布板を組み合わせることで、足場全体の許容積載荷重が決定されます。例えば、1200mmの建枠に500mm幅の布板2枚を使用した場合、許容積載荷重は500kgになりますが、建枠が900mmの場合には500mm幅1枚と250mm幅1枚の組み合わせで、許容積載荷重は370kgになります。
幅600の足場 | 幅900の足場 | 幅1200の足場 |
250kg | 370kg | 500kg |
ステージ足場の積載荷重 計算方法と基準値


ステージ足場の積載荷重を計算する際には、安全性を保つために正しい基準を理解しておく必要があります。特に、積載荷重は足場の種類や幅によって明確に定められています。
ステージ足場における積載荷重の基準
ステージ足場をはじめとした一般的な足場の積載荷重の基準は以下の通りです。
- 単管足場: 1スパンあたり400kg以下
- クサビ緊結式足場(幅900mm以上): 1スパンあたり400kg以下
- クサビ緊結式足場(幅400mm以上900mm未満): 1スパンあたり200kg以下
- 標準わく組足場(縦わく幅1,200mm): 1スパンあたり500kg以下
- 標準わく組足場(縦わく幅900mm): 1スパンあたり400kg以下
- 簡易わく組足場: 1スパンあたり250kg以下
- ブラケット一側足場(単管): 1スパンあたり150kg以下
これらの数値は、建設業労働災害防止協会のガイドライン『足場の組立て等作業の安全』に準拠しています。
具体的な計算例
例えば、標準わく組足場(縦わく幅1,200mm)の場合、1スパンあたりの最大積載荷重は500kgです。この基準値を守り、設置する資材や作業員の総重量が500kgを超えないように計画・管理する必要があります。
安全な積載荷重管理のための注意点
- 各スパンの最大積載荷重を明確に表示する(労働安全衛生規則第562条に基づく)
- 衝撃荷重や動荷重を考慮して安全マージンを設ける
- 積載荷重の定期的な点検と安全確認を実施する
これらのルールを遵守し、足場の使用時の安全性を確保しましょう。
参考:土木エンジニアドットコム「足場強度計算のポイントと基準」
各足場タイプ別 積載荷重の具体的計算例


① 単管足場(最大積載荷重:400kg以下)
単管足場の場合、資材と作業員の重量の合計が400kg以下である必要があります。
- 作業員2名(60kg×2)=120kg
- 資材(工具、材料)=250kg
- 合計:120kg+250kg=370kg(基準内)
② クサビ緊結式足場 幅900mm以上(最大積載荷重:400kg以下)
幅900mm以上のクサビ足場も、合計重量が400kg以下です。
- 作業員1名(70kg)
- 資材(タイル、接着剤)=300kg
- 合計:70kg+300kg=370kg(基準内)
③ クサビ緊結式足場 幅400mm以上900mm未満(最大積載荷重:200kg以下)
幅が狭い場合、積載荷重は200kg以下と厳しくなります。
- 作業員1名(60kg)
- 資材(塗料・ローラーなど)=100kg
- 合計:60kg+100kg=160kg(基準内)
④ 標準わく組足場 縦わく幅1,200mm(最大積載荷重:500kg以下)
縦わく幅が広い場合は最大500kgまで積載可能です。
- 作業員3名(70kg×3)=210kg
- 資材(建材、工具)=250kg
- 合計:210kg+250kg=460kg(基準内)
⑤ 標準わく組足場 縦わく幅900mm(最大積載荷重:400kg以下)
幅がやや狭い場合は400kg以内が限度です。
- 作業員2名(65kg×2)=130kg
- 資材(軽量建材)=250kg
- 合計:130kg+250kg=380kg(基準内)
⑥ 簡易わく組足場(最大積載荷重:250kg以下)
軽量な作業向けの足場です。
- 作業員1名(70kg)
- 資材(塗料や工具)=150kg
- 合計:70kg+150kg=220kg(基準内)
⑦ ブラケット一側足場(単管)(最大積載荷重:150kg以下)
小規模な補修作業に使用します。
- 作業員1名(60kg)
- 資材(補修材)=50kg
- 合計:60kg+50kg=110kg(基準内)
以上のように、足場の種類とサイズに応じた積載荷重の管理が、作業現場の安全性を高めます。これらの計算例を参考に、正しい積載荷重管理を徹底しましょう。
法律に基づく表示義務
足場の最大積載荷重は、労働安全衛生規則 第562条に基づき、足場に表示しなければならないことが定められています。この表示義務は、作業員が足場の安全な使用ができるようにするために重要です。最大積載荷重を超えて積載することは、落下事故などの重大なリスクを引き起こす可能性があるため、厳しく避けなければなりません。
労働安全衛生規則 第562条について詳しくは以下の厚生労働省URLをご覧ください。
https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/001495778.pdf
まとめ
足場の積載荷重計算は、足場の種類や使用される布板のサイズによって異なりますが、基本的には布板の耐荷重能力に基づいて行われます。正確な計算と足場に関する法律の遵守は、作業現場の安全を確保するために不可欠です。足場の設置や使用に際しては、常に専門家の指導に従い、安全基準を守ることが重要です。